道路の落下物を踏んで自動車が破損した。事故の責任は誰にあるのか
道路にあった落下物を踏んでしまって自動車が破損したら、悔しいですよね。
「落としたやつに責任取らせてやる」
と思ったりしますよね。
しかし残念ながら、全部の責任を落とし主に負わせることは難しいことが多いです。
「じゃあ道路管理者に責任取らせてやる」
と思われるかもしれません。
道路管理者が通報を無視したとか、すぐに対応しなかったという事実があればそれも可能でしょうが、いつも通り適切に対応していた場合は、道路管理者に責任を問うこともできません。
ではどうしましょうか?
今回は、道路の落下物を踏んで自動車が破損したときの責任のお話です。
見出しで拾い読みする?
道路の落下物を踏んで、自動車が破損してしまったとき
こうして破損したことについて調べていらっしゃるということは、すでに道路の管理会社への通報はお済みでしょうから、その話はしなくても大丈夫ですよね。
もし通報がまだでしたら、後続車の安全のためにも【#9910】に電話しましょう。
さて、落下物を踏んで自動車が破損したとき、落とし主がわかれば、落とし主との示談になるでしょう。
車両保険に加入していれば、保険会社を通しての交渉になるでしょう。
車両保険に入っていなければ、自身での交渉か、弁護士に相談することになります。
いずれにしても、落下物が落下しているときにぶつかったのでなければ、落とし主の責任は比較的軽くなります。
判例としては、落とし主60%・踏んだ人40%となることが多いようです。
「いやいや落ちてなかったら事故ってなかったんだから、落としたやつのせいでしょ」
と思いますよね。
しかし判例はそうなっていません。
ここで考えてもらいたいのは、もし落とし主がいないものを踏んだとき、誰に責任を問うかということです。
例えば強風で飛ばされてきたものを踏んだとき、風に責任を問うわけにはいきませんよね。
踏んだものの所有者が適正な管理をしていれば、その人にとっても想定外のことで、所有者だけに責任をかぶせるのは酷です。
地震で倒れた家屋の下敷きになった人の補償を、家屋の所有者に行わせるようなものと考えてもらえれば、酷だということは感覚としてわかりますよね。
話を戻して、もし落下物の管理を適切に行っていなかった(しっかり固定していなかった等)ということが証明できれば、落とし主の責任は少し大きくなるでしょう。
それでも落とし主は、落としたこと自体について法で裁かれますので、さらに踏んだ人への補償もすべて行えというのは、かなりきついことです。
一 みだりに道路を損傷し、又は汚損すること。
二 みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある行為をすること。道路法第四十三条
もし落とし主が見つからなければ、完全に自腹(または自分の車両保険)での修理となってしまいます。
しかし上述したように、落とした人は落としたことについての責任がありますから、それは警察が調べ上げてくれるでしょう。
そのためにも、あなたから一度警察に、
「落下物を踏んで車が破損した」
という連絡を入れておくことをおすすめします。
そうすれば落とし主が見つかったときに警察からあなたに
「落とし主が見つかりました。補償に関しては直接話し合ってくださいね」
と連絡が来るでしょう。
警察が間に入って調整してくれることはありません。
警察が追及するのは落としたこと自体の責任であって、落とし物を踏んだ(踏ませた)ことについては関与する根拠がありません。
道路上の落下物を踏んだ人の責任
ここで思い出してもらいたいことは、
「あなたは完全に、安全に配慮して運転していたか」
ということです。
避けれる車間距離を空けていたら、避けれたものではありませんか?
もし適切な車間距離を空けていなかったら、車間保持義務違反です。
また、避けたり停止したりするのに十分な車間距離を空けていたにもかかわらず踏んでしまったときは、もしかしたら、
「ぼーっとしていた」
ということはありませんか?
そうであれば、安全運転義務違反と言われても仕方ありません。
とくに
「ほかのドライバーは避けていたけど、あなただけが踏んだ」
というときには、安全に運転していたかどうかがあやしくなってきます。
「他人に害を及ぼさないような速度と方法」と規定してあります。
これは
「不適切な運転で他者を巻き込んだらあなたの責任。あなたに害があれば、当然あなたの責任」
という主旨ととらえることができます。
まとめ
道路の落下物を踏んでしまって、さぞかし悔しい思いをなさっているところでしょう。
しかし残念ながら、落とし主に責任を問えるとしても、よほどの過失がなければ半分くらいです。
しかも過失は相手から申告することは“まれ”で、その立証はあなたからしなければならず、大変です。
イライラして誰かに責任を取らせたくなるのはわかりますが、一度落ち着いて、状況を整理してから示談に臨むことが大切ですよ。
裁判に持ち込んだところで、裁判所にしてみればささいな事故ですから、個別の状況をしっかり考慮してくれるかどうか、あやしいです。
「裁判の手間とお金がかかっただけで、示談と補償は変わらなかった」
という結論では、むなしくなりますよね。
あなたが少しでも満足できる結果になることを祈ります。