あなたの遺伝子は大丈夫?葉酸の代謝が苦手な人はサプリに気をつけて!
妊娠おめでとうございます。体にいろんな変化が起きてきて、不安になることもあるかと思います。
さて、妊娠中には多くの栄養素の摂取推奨量が増えます。
その詳細は妊婦さん必見!妊娠中に好ましい食事、避けたい食事!の記事にまとめています。
その中でも葉酸は、サプリとしての摂取を厚生労働省が推奨しています。
しかし、遺伝子タイプによって気をつけたいことがあります。
見出しで拾い読みする?
厚生労働省が葉酸の摂取を推奨している7つの理由
- 海外の複数の研究で、葉酸が生まれつきの障害の一種のリスクを低下させるという結果が出ている
- 葉酸が体の中で分解されたものが、生まれつきの障害の一種が発生する段階において作用することことに、医学的な根拠がある
- 1990年代から欧米を中心に、葉酸摂取が推奨されている
- その結果は明確ではないが、アメリカのある州のデータでは、葉酸摂取によって生まれつきの障害の一種の発生リスクが減っているように見える
- 民族的に近い、中国南部での最近の研究をもとに考えたら、日本人にも葉酸の効果がありそう
- 日本では、葉酸が関わる生まれつきの障害の一種が増加傾向である
- 日本人の食生活は多様化していて、今後葉酸が足りない人が増えていくかもしれない
では、どれくらい摂取することが推奨されているのでしょうか?
一日にどれくらい摂取するか、その推奨量
推奨量は、食品からとるか、サプリという形で合成された葉酸としてとるかでかわってきます。
葉酸には、いろいろと分類があって、本来であればそこまで書くべきなのですが、あまり複雑な話になると理解しづらくなりますので、以下ではかなり雑にわけますが、念のため分類と、ここでの定義を書いておきます。
簡単に分類すると、葉酸は
- 葉酸
- 葉酸塩
に分類できます。ここでいう葉酸とは、非活性型の葉酸(フォーリックアシッド)です。葉酸塩とは天然のビタミン、活性型の葉酸(メチルフォレート)です。
さらに葉酸は構造上、
- プテロイルモノグルタミン酸型
- プテロイルポリグルタミン酸型
に分けることができます。合成されるのはモノグルタミン酸型で、食品中にはポリグルタミン酸型として存在することがほとんどです。
以上のことを簡単にまとめて、
食品中の葉酸=葉酸塩=プテロイルポリグルタミン酸型
サプリ中の葉酸=葉酸=プテロイルモノグルタミン酸型
としておきます。これで話が簡単になります。(ただし細かく見ていくとおかしなところがありますので、お気をつけください。)
食事(天然葉酸)として
妊娠していないときは1日240μgの摂取が推奨されています。
2015年の、20~29歳女性の1日の平均摂取量は234μgとなっていますので、妊娠していないときなら、平均的な食事をしていればまずまず足りているということです。
妊娠すると、生まれつきの障害を減らすために、胎児期は800μgの追加が推奨(※合成葉酸からの類推)されています。
胎児期を過ぎての妊娠中は、240μgの追加が推奨されています。
さらに出産後、授乳中は100μgの追加が推奨されています。
食事としてとるなら、費用面や調理のしやすさ、ビタミンA(の少なさ)を考慮したおすすめの食材は以下です。可食部100g中に含まれる葉酸量順に並べています。
- 焼き海苔:1,900μg
- 牛レバー:1,000μg
- ゆでえだまめ:260μg
- モロヘイヤ:250μg
- ゆでパセリ:220μg
- ゆでアスパラガス:180μg
- あおさ素干し:180μg
- ゆでブロッコリー:120μg
- 生サニーレタス:120μg
- ゆでにんにくの芽(茎にんにく):120μg
- 納豆:120μg
- ゆでほうれん草:110μg
- ゆで春菊:100μg
- いちご:90μg
- エリンギ:88μg
- ほたて:87μg
- ゆでとうもろこし:86μg
- 小松菜ゆで:86μg
- アボカド:84μg
- ゆでかぼちゃ:75μg
100g食べてこれだけですから、けっこう大変ですよね。
サプリ(合成葉酸)として
繰り返しますが、妊娠していないときでも1日240μgを食品から摂取することが推奨されています。その上で、
生まれつきの障害を減らすために、胎児期は合成葉酸400μgの追加が推奨されています。
胎児期を過ぎての妊娠中は、合成葉酸100μgの追加が推奨されています。
さらに出産後、授乳中は合成葉酸50μgの追加が推奨されています。
胎児期に推奨量を摂取するために
妊娠を希望している人は、妊娠がわかる前からの摂取が望まれます。
妊娠がわかるのはだいたい妊娠4週以降になるでしょうから、その間に葉酸が足りなくなることを防ぐためです。
耐用上限量(合成葉酸)
どんな栄養素でもそうですが、葉酸もとりすぎると悪影響が出ます。
合成葉酸には、「これ以上とらないで」という上限が設定されています。
18~29歳なら900μg、30~49歳なら1,000μgが上限として設定されています。
いろんなデータを根拠に、しっかりと考えられて設定されてるが…
この耐用上限量は、さまざまなデータをもとに、しっかりと考えられて設定されていますが、「これ以下なら絶対大丈夫」というものではありません。個人差があります。
これ以上とっても大丈夫な人もいるでしょうし、半分くらいでも具合が悪くなる人はいるでしょう。実際に具合が悪くなるまで葉酸をとってもらうような実験は倫理的に問題があるため、データとしては不足している現状です。
厚生労働省が“葉酸だけはサプリでも摂取するよう”に呼びかけている7つの理由
ほかの栄養素に関しては、サプリを使ってまでの摂取は呼びかけられていません。葉酸だけは、サプリを使ってでも摂取することが推奨されています。
その理由は以下です。
加熱すると、食品中の葉酸の働きが鈍くなる
葉酸は熱に弱く、加熱されると不活性化します。
食品中の葉酸は、水に溶けだす
葉酸は水にとけやすいので、調理中に水にとけだしてしまって、もったいないのです。
ほかの食品との組み合わせで、吸収されやすくなったりされにくくなったりする
食品から取ろうとすると、相性によって葉酸の吸収率がかわります。
「足りてるときは多いくらいで、足りないときは全然足りない」ということも起きるでしょう。
サプリなら1日の推奨量を確実に摂取できる
食品ならどれくらい吸収されるか予測できませんが、合成葉酸ならそのほとんどが吸収されることがわかっています。
妊娠中、通常の食事に、合成葉酸を100μg追加でとることで、血の中の葉酸の量を適正なレベルにできた
これも実験からわかっていることです。血の中の葉酸の量を適切に保つことができたら、きちんと働いてくれる見込みがありますよね。
天然葉酸にも合成葉酸と同じ働きがあるかは、今のところ科学的な根拠が不十分
実験は合成葉酸で行われているため、天然葉酸でのデータは揃っていないのです。
ですので、食品から推奨摂取量をとっても合成葉酸と同様の効果があるかどうか、わかっていないのです。
胎児期においては生まれつきの障害の一種を減らすために、合成葉酸400μgの追加摂取が望まれる
最初に書いた“葉酸の摂取が推奨されている理由”は、そのまますべて、サプリでの摂取をすすめる理由になります。合成葉酸でのデータをもとに、そういう判断がなされています。
葉酸をスムーズに代謝できるかは、遺伝子的な話もからんでくる
実は、合成葉酸の代謝が苦手なタイプの人がいます。それは遺伝子的な話であり、あなたがどうかは、検査してはじめてわかることです。そこまでやっておけば、合成葉酸をとるかどうかの明確な指標のひとつになります。
代謝できなかった未活性型の葉酸はどんどん体にたまっていき、ガンになりやすくなるということを示唆する研究もあります。とくにMTHFR のタイプがT/T型の人に関してはリスクが高くなっています。
しかし厚生労働省はそこまで詳しく伝える気はないようで、妊娠中にはサプリで400μgの摂取を推奨して、1,000μg以上は取らないよう伝えているだけの現状です。おそらく遺伝子によって変わってくることまでわかった上で、「妊娠中は400μgをサプリで」と推奨しているのでしょうが、若干不安は残ります。
厚生労働省の推奨と上限に根拠はありますが、具合が悪くなってからでは遅いと思いませんか?
「厚生労働省が推奨しているから大丈夫」と思われるのでしたら、心置きなくサプリで合成葉酸を摂取すればいいですし、「もしかしたら…」と思ったら万全を期すことになるでしょう。
遺伝子の検査は簡易なキットがあります。ひとつあとで紹介します。ただしその検査キットのページでは、T/T型の人に対しても栄養補助食品での葉酸摂取をすすめています。
さっきも言いましたが、T/T型の人は葉酸を活性化するのが苦手なので、未活性な状態でため込みやすいタイプです。摂取するとしたら、もとから活性型の葉酸のほうが安全です。なお、同ページによると、日本人の16%がT/T型、つまり葉酸の活性化が苦手ということです。
「100人に16人くらいなら、私は大丈夫」と思いますか?
それとも「100人に16人なら、私もそうかも」と思いますか?
いずれにしても検査しなければあなたの遺伝子タイプはわからないのです。「検査してみようかな」と思った方には、検査キットを紹介しておきますね。
葉酸は、いつからいつまで積極的にとる?
厚生労働省が普段の食事にプラスして葉酸をとるよう推奨しているのは、とくに胎児期においてです。それは、胎児期にしっかり葉酸をとることで、生まれつきの障害の一種を減らせると考えられているからです。そのために、妊娠がわかる前からの葉酸摂取もあわせて推奨されています。
そして妊娠期間中のみならず、授乳中もプラスするよう推奨値を示しています。
つまり、「生まれつきの障害の一種さえ防げればいい」という考え方なら、胎児期のみサプリで葉酸を補うという結論もアリでしょう。
妊娠中に葉酸サプリを使うかどうかも、考え方と遺伝子タイプによって変わる
さて、葉酸をサプリでとるべきかどうか、それはあなたの考え方と遺伝子タイプ次第です。
「やっぱりサプリなんて信じられない」という考え方
この考え方ならやはり、食事から葉酸をとることになるでしょう。しかし天然の葉酸は科学的なデータが集まっておらず、合成葉酸同様に生まれつきの障害の一種のリスクを減らせるかどうかわかりません。
「厚生労働省が推奨していることの根拠は認めるけど、私にあてはまるか心配」という考え方
まずは遺伝子検査ですね。
C/T型とC/C型においては合成葉酸摂取のリスクはそれほどないようなので、合成葉酸のサプリで400μgをとることが推奨されます。
T/T型なら合成葉酸は代謝されにくく、ガンのリスクを高めます。なるべく食事から葉酸をとることになるかと思います。しかし「食事だけでとるのは、大変」ということは、おすすめ食材を見てもらったときに感じてもらえたと思います。実はサプリで天然葉酸がとれるものがあるんです。
天然葉酸なら、余ったぶんは体外に排出されますので心配はありません。ともかく、まずは検査ですね。
検査するなら→『葉酸代謝遺伝子検査キット』
その結果がC/C型・C/T型でしたら、合成葉酸摂取が推奨されます。
匂いがきつくなく、大きさもほどほどで飲みやすく作られている合成葉酸サプリをひとつ紹介します。ほかにも必要な栄養素を計算してバランスよく作ってありますので、つわりで食事できないときはとくに頼りになりますよ。
「厚生労働省が推奨しているなら間違いない」という考え方
検査せずに合成葉酸を摂取するのが合理的ですね。
さて今回も長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました!
参考文献等
・神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
・Cancer Incidence and Mortality After Treatment With Folic Acid and Vitamin B12